農学全般

栽培学汎論


農産物の需要と生産

農産物の需要と生産

・わが国の食生活は1960〜70年代の高度経済成長期を経て大きく変化してきた。特に米を中心とする穀類から摂取するエネルギーの割合が小さくなり、畜産物や油脂類の占める割合が大きくなっている。しかし99年度の国民1人当たり供給熱量(2645kcal)を主な品目別に見ると、米が630kcal、畜産物が407kcal、油脂類が385kcal、小麦が328kcalとなっており、米が畜産物を上回っている。わが国におけるタンパク質・脂質・炭水化物の熱量比(PFCバランス)はほぼ適正な水準にあり、栄養的にバランスのとれた「日本型食生活」と呼ばれている。しかし、年齢階層別に見れば若年齢層における脂質の割合が高くなっている
・わが国の農業は生鮮向け生産を中心としており、加工向けの供給体制が十分整っているとはいえない。国内農産物における加工用原料は、加工用トマトのように生産の段階から加工食品向けとして契約栽培されているものもあるが、多くは規格外品などを使用している。食品製造業は全製造業に占めるシェアが事業所数・従業者数・製造品出荷額のいずれにおいても約1割であることから「1割産業」と呼ばれている。
・わが国の食料自給率は供給熱量ベースで見ると40%(1999年)であり、50%を下回る水準にある。近年、食糧自給率はほぼ一貫して低下傾向にあったが、10年度以降は横ばいとなっているマメ類麦類の自給率は低く、なかでも醤油・味噌・豆腐・納豆等の加工品の原料であり、飼料や油脂原料でもあるダイズは5%にすぎない。また近年は野菜の輸入も増加してきており、その自給率は82%となっている。
・小麦の自給率は11%にすぎないが、その生産量は微増傾向にある。国産小麦は主としてうどんや素麺などの日本めん用に仕向けられているが、製粉歩留が低い・粉の灰分が高く色沢が不良であるといった点でオーストラリア産小麦(ASW)に比べ品質が劣っているため、一般には輸入小麦と混合して使用されている。しかし近年は国産小麦だけを使ったうどんや素麺の生産に取り組むところも増加しつつある。
・わが国は南北に長い地形であり、食料消費にも大きな地域間格差が存在した。典型的な例は西日本で多く消費された牛肉東日本で多く消費された納豆である。1960年代前半の統計によれば、最も多く消費される地域と最も少ない地域に10倍程度の格差が見られた。しかし現在ではこうした地域間格差は徐々に縮小し、食生活は平準化してきている。牛肉で見ると消費量の多かった近畿や中国で減少し、それ以外の地域で消費量が増加しているため、その格差は2倍程度まで縮小している。
・日本は飼料穀物や油糧種子のほとんどを輸入に依存する食料需給構造を形成している。また多くの輸入農産物において輸入相手先が少数の限られた国に集中している特徴を持っており、例えばコムギではアメリカ・カナダ・オーストラリアの3か国で輸入総量の100%を占めている。今後、国内においては限られた農地等を有効に活用しつつ、諸外国との関係においても安定的な農産物輸入の継続に向け努力する必要がある。
自給率食料需給表を基に国内生産量を国内消費仕向量で割って算出される。コメ・コムギといった品目別自給率のほかに、穀物自給率、主食用穀物自給率などの項目がある。
品目別自給率−各品目の国内生産量を国内消費仕向量で割ったもの。2000年度の各自給率はコメ95%、コムギ11%、ダイズ5%、野菜82%、果実44%、肉類52%(牛肉33%、豚肉57%、鶏肉64%)、鶏卵95%、砂糖類29%である。鶏卵を除いた各自給率は低下傾向で推移している
主食用穀物自給率−コメ・コムギ・オオムギ・ハダカムギのうち飼料仕向分を除いて算出したもの。2000年度は60%であった。
穀物自給率−穀物の国内総生産量を国内消費仕向量で割ったもの。食用穀物のほか、飼料用穀物も含む穀物全体の自給率。2000年度は28%であった。
飼料自給率−飼料用穀物、牧草などを可消化養分総量(TDN)に換算して算出した自給率。2000年度は26%であった。

 自給率 国内生産量 × 100 供給熱量自給率 国民一人当り国産供給熱量 × 100
国内消費仕向量 国民一人当り供給熱量




  


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