農学全般

栽培学汎論


植物栄養学分野

微量元素・・・Fe、Mn、B、Ca、Zn、Mo
※Fe、Mn、Bは比較的必要量が多い。Moは最も必要量が少ない。

作物の栄養障害

鉄欠乏銅・亜鉛・マンガンの過剰によって引き起こされるため特に重金属誘導鉄クロロシスと呼ばれる。その原因は鉄の錯化合物の形成がこれらの重金属によって競合的に妨げられるためと考えられている。症状は新葉に発生しやすく、葉脈間が黄白化する(クロロシス)。一般的に中性からアルカリ性の土壌で発生するが、酸性土壌でリン酸含量が高い場合にも発生しやすい。
・カルシウムは生体内で再移動しにくい要素であり、生育が盛んな先端葉に欠乏障害が発生しやすい。キャベツカルシウム欠乏症中心葉の生育が阻害され、葉が内側に巻くことが特徴である。またトマトやナスでは尻腐れを、タマネギでは心腐れを生じる。
マグネシウム欠乏症の特徴は葉脈間の黄化の他に、葉脈に沿って黄白化する場合や葉縁から黄化する場合がある。カリウムあるいはカルシウム含量の著しく高い土壌で発生しやすい。
亜鉛欠乏症節間伸長の抑制下位葉の黄化を引き起こす。
・リン酸はアルミニウムと結合して難溶性の化合物となりやすくアルミニウムを多量に含む火山灰土壌鉄やアルミニウムが活性化している酸性土壌ではリン酸欠乏症を起こしやすい。
リン欠乏症葉が暗緑色になる場合と、アントシアニン色素により赤紫色を呈する場合がある。
ホウ素欠乏症生長組織の枯死構造破壊などの急激な変化に繋がり、葉柄や茎が折れやすくなる。ホウ素の生理作用については不明な点が多いが、畑作物や果樹を中心にして頻繁に大きな被害をもたらすため農業上の重要な元素として位置付けられている。
マンガン欠乏症葉脈を残して葉が黄化し、褐色の小斑点を伴った症状を示す。
マンガン過剰症は葉脈、あるいは葉脈に沿ってチョコレート色に変色したり、葉脈間に黒褐色の斑点を生じることが特徴である。
窒素過剰症の症状は葉色が暗緑色となり、過繁茂軟弱徒長することが特徴である。
・微量要素のモリブデンはマメ科作物の根粒菌の窒素固定に必要であり、硝酸還元酵素の成分であるモリブデンが欠乏すると、硝酸が体内に蓄積して葉の乾物量の低下下位葉の黄化葉の奇形などを生じる。土壌への直接施肥や葉面散布よりも種子処理のほうが有効である。

酸性土壌における生育障害

・酸性土壌に対する耐性は作物によって異なっており、イネ・ソバなどは酸性に強くナス・オオムギなどは酸性に弱い
・酸性土壌における生育障害の原因には以下のようなものがある。
@酸性pHそのものによる障害
A酸性pHに溶解するマンガン・アルミニウムなどの害作用
B有効態リンの不足
Cカルシウム・マグネシウム・カリウムなどの塩基の不足
Dホウ素・亜鉛・モリブデンなどの微量要素の不足
E微生物の種類や活性の異常
このうち最も重要な酸性障害はAのアルミニウム過剰である。アルミニウムはpHが約5.0以下の酸性土壌で土壌中に溶出し、イオン吸収を阻害するが、特にリン・カルシウム・マグネシウムで吸収阻害が著しい。アルミニウム過剰障害の特徴は根の伸長阻害であるとされている。
Aのマンガン過剰障害もアルミニウムと同様に酸性土壌中に溶出することで生じリンゴなどでは粗皮病を引き起こす。
Bの有効態リンの不足は土壌の酸性pHと高アルミニウム条件に密接に関係しており、酸性土壌における重要な生育障害の要因となっている。
Eの具体例として酸性pHでは窒素固定菌や硝化菌などの微生物の活性が低下することが知られている。




    


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