農学全般

栽培学汎論


肥料学分野

肥料の性質

ク溶性とはクエン酸のような植物の根から出る酸や土壌中の酸に溶解する性質。従ってク溶性リン酸植物に徐々に吸収されるが、水溶性リン酸酸性の土壌中でアルミニウムや鉄と反応して難溶性のリン酸塩に変化してしまい植物に吸収されにくい
※老朽化水田における硫化水素による吸収阻害は硫酸基を含まない肥料を用いることで軽減される

[窒素肥料]
硫安(硫化アンモニウム)
老朽化水田に見られる水稲の秋落ち現象は土壌の還元によって硫安の硫酸イオン(SO22-)が還元され、その結果発生する硫化水素(H2S)が根の養分吸収を選択的に阻害することが原因と言われている(鉄があれば硫化水素と結合し硫化鉄となり無害化されるが、老朽化水田では鉄が溶脱しているため硫化水素により根腐れが生じる)。従って水田における硫安の使用は不適である。
塩安(塩化アンモニウム)
硫酸基を含まない無硫酸塩肥料であるため水田への施用に適している。ただし硫安より土壌を酸性にしやすいため注意が必要である。ジャガイモやサツマイモでは塩素分が繊維質を増加させるためイモの栽培には不適であり、特に日照不足のときは避けたほうがよい。
硝安(硝酸アンモニウム)
アンモニア性窒素と硝酸性窒素を同量含有し、全成分が植物に吸収されるため土壌への悪影響がない。ただし、硝酸性窒素による窒素の溶脱が多いため分肥が望ましい畑作主体で欧米でよく使用されている
石灰窒素
植物にとって有害であり、直接与えると種子の発芽を阻害し葉を枯死させる。ただし適切に施用すれば水稲や畑作物において硫安と同等の肥効を示し、しかも土壌の酸性化の危険がないため有効である。
尿素
化学的にも生理的にも中性を示し、非電解質の化合物であるため土壌での吸着は弱い土壌中のカルシウムなどの塩の流亡を促進せず土壌の酸性化をもたらさない。無硫酸塩肥料であるため水田の施用に適している。また葉面に散布しても吸収されるため、秋落ち現象など根に障害が出て養分吸収が衰えたときには有効である。

[カリウム肥料]  ※硫化水素によってケイ酸とともに常に著しい吸収阻害を受ける
ケイ酸カリウム
持続性のあるカリウム肥料であり、畑にも水田にも使用できる
塩化カリウム
生理的酸性肥料で、吸湿性が小さく、複合肥料の形で施されることが多い

[リン酸肥料]
過リン酸石灰
リン酸カルシウムと硫酸カルシウムの混合物で、化学的には酸性(pH 2〜3)を示すが生理的には中性肥料である速効性のリン酸肥料として優れた肥効を示し、リン酸の標準肥料としてよく用いられる。硫酸塩を含むため水田には不向きである。
・溶成リン肥
ク溶性で、土壌中の水に溶けている炭酸や植物の根から分泌される有機酸によって溶け、徐々に植物に吸収される。老朽化水田の土壌改良のための無硫酸塩肥料(塩基性肥料)として広く単肥で利用されている。寒冷地の生育の短い作物や中性に近い土壌では過リン酸石灰よりも劣るが、アルカリ分が40%もあり、マグネシウムも含むため、酸性の強い土壌では優れた肥効を示す。
・焼成リン肥
ク溶性で、土壌中の水に溶けている炭酸や植物の根から分泌される有機酸によって溶け、徐々に植物に吸収される。そのまま単肥で使用されることは少なく、苦土石灰などと複合して利用される。家畜や家禽の飼料用リン・カルシウム補給剤としてもよく利用されている。

[有機質肥料]
・菜種粕
有機栽培に利用される有機質肥料のひとつ。有機質肥料は分解が遅いため寒冷地には適さない。

肥料の混用における留意点

硫安と塩化カリ
混用しても問題はない。これに過リン酸石灰を混用した配合肥料は最も一般的なものである。
硫安と生石灰
アンモニアを含む肥料にアルカリ性肥料を配合するとアンモニアがガスになって空気中に逃げ、窒素成分の損失が生じる
過リン酸石灰と生石灰
水溶性リン酸を含む肥料にアルカリ性肥料を混入すると水溶性リン酸含量が減り、難溶性あるいは不溶性リン酸に変化する。リン酸の非有効化には直接結びつかないが、肥効が速効性から緩遅効性に変化するので注意が必要である。
ダイズかすと尿素
ダイズかすに含まれるウレアーゼにより尿素が分解され炭酸アンモニウムに変化し、pHの上昇や窒素揮発に繋がる。
硝安と過リン酸石灰
硝酸を含む肥料と酸性肥料を混合すると窒素の揮散が起こる
硝安と有機物肥料
硝酸を含む肥料と分解しやすい有機物肥料を混合すると硝酸の還元が起こり、ガス化による揮散損失がみられる。




  


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