農学全般

栽培学汎論


植物ホルモン

植物ホルモンの性質

・植物ホルモンとしては一般にオーキシンジベレリンサイトカイニンアブシジン酸エチレンブラシノステロイドの6種が知られている。
・植物ホルモンの特徴としては以下のようなものが挙げられる。
@動物ホルモンのように特定の腺で合成されず、また特定の器官にのみ作用しない
Aホルモン同士の相互作用がある。
B環境要因により生合成が影響を受ける
C組織、器官、発達段階、植物種により生理作用が多様である。これは植物(組織)によるホルモンに対する感受性の違いやホルモン同士の相互作用によると考えられる。

[オーキシン]
・ダーウィンによる屈光性の研究から発見された。
・オーキシンの生理作用は茎と根の伸長生長促進頂芽の生長促進と側芽の生長阻害頂芽優勢の促進)、維管束の分化促進、発根促進、果実の生長促進種無しブドウにおける利用)、葉や果実の基部の離層形成抑制などがある。
花の性分化に影響し雌花の形成を促進する
・主として生長点で生産され,基部に向かって移動する。このような極性移動は、オーキシンでのみ知られている。

[ジベレリン]
イネの馬鹿苗病菌より産出され、植物を徒長させる毒素として単離された。
・ジベレリンの生理作用は発芽促進、茎と根の生長促進、細胞分裂促進、抽台の誘導、生殖生長調節、単為結実誘起などがある。
・穀類の種子では発芽時の糊粉層細胞におけるα-アミラーゼ合成に必要であり、種子の発芽を促す休眠打破の促進)。また花の性分化にも影響し、一般にウリ科植物では雄花の形成を促進する

[サイトカイニン]
・サイトカイニンの生理作用は不定芽の形成促進発芽促進側芽の伸長生長促進、緑化促進、細胞分裂促進老化抑制などがある。
・サイトカイニンは主に根端部で合成される。

[アブシジン酸]
・アブシジン酸はその離層形成の促進作用から命名された植物ホルモンであるが、現在では離層形成を直接促進するのはエチレンであり、アブシジン酸はエチレン合成を誘導することにより間接的に離層形成を促進すると考えられている。
・アブシジン酸の生理作用は伸長生長阻害休眠芽の誘導発芽の抑制(阻害)、気孔閉鎖、乾燥ストレス対応老化促進などがある。
・アブシジン酸は種子成熟休眠形成に必須である。また乾燥・低温・塩などにより合成が促進され、これらのストレス反応に重要な働きをすると考えられている。
アブシジン酸はオーキシン、ジベレリン、サイトカイニンによって促進される生理現象の多くを阻害する

[エチレン]
・エチレンの生理作用は離層形成の促進休眠打破、不定根形成促進、茎の肥大生長促進、茎の伸長阻害、水性植物の伸長促進、生殖生長の調節、果実の成熟促進老化(落葉)促進傷害反応などがある。
エチレンはバナナ・リンゴ・トマトなどのクライマクテリック型果実で成熟と呼吸の著しい上昇を引き起こす。またパイナップルでは果実の成熟ではなく開花を誘導することが知られている。
・エチレンの合成は傷害や菌の侵入によって促進される。

[ブラシノステロイド]
・ブラシノステロイドは唯一のステロイド系植物ホルモンであり、茎の伸長生長促進、種子稔性の向上など生長調節の様々な局面で生理的役割を果たしている。この事実はブラシノステロイド欠損ミュータントを用いた解析より近年になって発見された。

ホルモンの相互作用

・カルス培養の際、サイトカイニンと同時に与えるとカルスの増殖を促進する。さらにオーキシン濃度を高くサイトカイニン濃度を低くするとカルスから根が分化し、サイトカイニン濃度を高めオーキシン濃度を低くすると不定芽が分化する。
・オーキシンによるキュウリ胚軸切片の伸長作用はジベレリンやブラシノステロイドの前処理によって相乗的に促進される。
・頂芽で合成され側芽に運ばれたオーキシンは側芽の生長を抑制し、サイトカイニンは側芽の生長を促進する(頂芽優勢の原理)。
・インゲンやワタの器官脱離においてアブシジン酸はエチレン生成を誘導することにより離層形成を促進する





inserted by FC2 system