農学全般

栽培学汎論

種子

種子の保存】

・貯蔵には胚を保護するための種皮がよく発達していて、含水量の少ない成熟種子が適している。
・種子が発芽力を有している期間を種子寿命といい、種皮が硬く厚いほど長命になり、また一般的に大粒よりも小粒のほうが寿命が長い。種子寿命を長く維持するには乾燥・低温条件にして酵素活性を抑えることが重要である。種子はその種子寿命により短命種子、常命種子、長命種子に分類できる。
短命種子−ネギ、タマネギ、ニンジン
常命種子−イネコムギ
長命種子−キャベツ、ゴボウ、ホウレンソウ、ソラマメアズキ(2〜3年)/ダイコン、キュウリ、カボチャ(3〜4年)/
        ナス、トマト、スイカ(4年以上)
・マメ類の多くは乾燥しすぎると種皮が水を通さなくなるため水分を十分に吸収することができず発芽しないものが出てくる。このような種子を硬実種子と呼んでいる。硬実種子の硬さの原因は種皮灰分中のケイ酸含量が多いこと種皮柵状細胞の肥厚柵状細胞内膜のペクチン質が吸水性を失うことなどが挙げられる。
・生石灰は吸湿力が強く安価である種子の含水量を低くしすぎる危険があり、塩化石灰は適度な吸湿力をもつが吸湿すると潮解する性質をもつため扱いが難しい。

種子の発芽】

・発芽は主に温度・水分・酸素の3条件がそろえば発芽するが、光がなければ発芽しない光発芽種子や光を受けると発芽が阻害される暗発芽種子なども例外として存在する。
 ex. 光発芽種子−ニンジンレタスゴボウ   暗発芽種子−ダイコンキュウリ
発芽率発芽し得るもの全てが発芽しきったときの発芽粒数の百分率(%)である。一方、発芽勢は発芽の勢いを示すもので、適当な発芽締切日を設けてそれまでに発芽した粒数の百分率(%)で表される。

[温度]
発芽率が最も高く、発芽速度も速くなる温度最適温度という。また、種子が発芽するための温度範囲のうち最も低い温度を最低限界温度といい、最も高い温度を最高限界温度という。
・種子が乾燥していると−170℃の低温下でも生存することができる。

[水分]
・発芽における水の役割は細胞の膨圧調節各種酵素作用の促進貯蔵物質の分解と転流細胞の伸長などがある。一般的に温度が高くなると吸水量も増加する
・一般的にマメ科種子は吸水量が多く(吸水量は100%を超える)、その吸水量を乾物重に対する割合で表すとソラマメで157%、エンドウで186%となる。
・コムギは登熟後期の降雨などによって穂発芽を生じるがその程度には品種間差があり、日本の在来種は自然淘汰により穂発芽性の大きいものは少なく、外国種には穂発芽性の大きいものが多い。特に欧米の乾燥地帯からの導入品種では穂発芽性が顕著である。

[酸素]
・水分の吸収が起こり温度が高くなると種子は発芽の準備を始め、胚が吸水し生長するためにエネルギーが必要となり代謝発酵によりエネルギーが供給される。それに伴い無気呼吸から有気呼吸への転換が生じ、酸素の要求量も増加する
・発芽中の酸素要求量は作物の種類によって大きく異なる。イネは無気呼吸によって無酸素状態でもその80%が発芽し、水中でも発芽が可能である
・呼吸において排出する炭酸ガスと吸入する酸素の比を呼吸率といい、イネ種子では正常な発芽でほぼ1、水中発芽では酸素供給が不十分で無気呼吸が行われるため1より大きくなる

種子の予措

・消毒法
・選別法
・自殖性植物は一般的に遺伝的特性の変化が少ないため、数年に1回程度の種子更新を行えば特性は維持することができる。しかしながら自殖性植物でも過度に自殖が進むと自殖弱勢を現し、品種退化の原因となるため種子更新は行う必要がある
・10a当りの播種量はイネで4〜5kg、マメで5〜10kg、イモで100〜150kgであり、収量はそれぞれ500kg前後100〜200kg2000〜3000kgになる。これを種子・種苗の増殖率でみてみるとイネは100前後、マメ・イモで50以下になる。

種子および種苗に関する法律

・主要農作物種子法は優良な種子の生産および普及を促進することを目的としてつくられた法律であるが、生産者が指定種子生産圃場で作られた種子を使用する義務については明記されていない(使用する義務はない)。
・種苗法では登録品種についてその登録者に一定期間の登録品種の排他的権利を付与しており、登録品種は品種登録者の許可なしに生産・販売することはできない




  


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