農学全般

栽培学汎論


育種

作物の起源

遺伝資源とは将来人類にとって利用し得る必要な遺伝子を持つ植物体またはその一部を指す。遺伝資源は@遺伝資源の探索および導入、A品種系統の長期保存、B特性評価、Cデータベース化、C有効利用という流れに沿って利用される。
・作物の遺伝変異の地理的分布に基づいたN.I.Vavilov(1951)の遺伝子中心説によると遺伝資源の探索に効率のよい場所は起源中心地域とされている。
・図はJ.R.Harlan(1975)が提唱した作物起源の中心を示すものである。彼はド・カンドールやバビロフによる野生植物の栽培起源地を参考にして作物の起源の中心地である第1次センターと、人類の移動によって伝播され適地を得て多く栽培されるようになった第2次センターを区別した。



・AからFまでの地域を起源地とする作物には以下のようなものがある。
A:近東−パンコムギ、マカロニコムギ、オオムギ、エンバク、ニンジン
B:アフリカ−モロコシ、オクラ、ササゲ、コーヒー
C:中国−ソバ、ダイズ、アズキ、ハクサイに代表される果菜類
D:インド及び東南アジア−イネナスキュウリ、ゴマ、サトイモ、バナナ、サトウキビ、ココヤシ
E:中央アメリカ−トウモロコシ、インゲンマメ、日本カボチャ、カンショ
F:南アメリカ−バレイショ、ワタ、タバコ、洋種カボチャ、トウガラシ、イチゴ、パイナップル、トマト

育種法
・いくつかの形質について遺伝的に異なる品種間で交雑を行って優良個体を選抜する方法を交雑育種法といい、この方法によって現在までに多くの品種が生み出されてきた。自殖性植物の主要な交雑育種法としては系統育種法と集団育種法が、他殖性植物の主要な交雑育種法には一代雑種育種法と合成品種育種法がある。
系統育種法
雑種のF2あるいはF3の初期世代から優れた個体を選びその次代から系統として育成し、系統選抜系統内個体選抜を繰り返す育種法。この方法は選抜対象形質の遺伝様式が単純その遺伝的性質の判定が容易である場合に有効である。交雑育種の中でもっとも古く、イネ・ムギ・ダイズなどの育種に利用されてきた。
集団育種法
雑種のF4あるいはF6まで個体選抜を行わないで集団のまま世代を経過させ、ある程度遺伝的に固定した後期世代になってから個体や系統の選抜を開始する方法。イネ・ムギではこの方法が主流である。
一代雑種育種法
両親にホモ性の高い系統を用いた交雑において生じる雑種強勢を利用した育種法得られたF1は生育や品質の均一性、多収性、耐病性などに優れている。また効率的にF1種子を得るために雄性不稔自家不和合性が利用されている。他殖性植物だけではなく、自殖性植物でも多く用いられている。
合成品種育種法
組合せ能力検定に基づいて選定された多数の系統の任意交配によって得られる合成品種を作り出す方法。合成品種内の個体の任意交配によって集団の中に多様な遺伝子型を維持しながら収量性を高め、同時に広域適応性も確保しようとする。他殖性牧草類の主要な育種法である。
突然変異育種法
遺伝的変異を人為的に高頻度で作り出し有用な変異もつ系統を交雑に利用する方法育種素材の変異幅を大きくできる点が特徴で、現存の育種素材の組換えによって新品種を育成する交雑育種法と対照的である。
戻し交雑育種法
優良品種を母親に希望形質をもつ品種を父親にして交雑し、その雑種に優良品種を連続戻し交雑することで希望形質のみを優良品種に導入する育種法。現在すでにある優良品種の形質をそのまま残して耐病虫性のような特定の性質のみを改良する場合に有効な方法。





  


inserted by FC2 system