農学全般

栽培学汎論


野菜

野菜の分類

・植物が栄養生長の適温より低温または高温)に遭遇したときに花芽形成が誘導・促進される現象を春化バーナリゼーション)という。春化には種子感応型と緑植物感応型の2つがある。直、レタスは高温・長日によって花芽形成が促進される
種子感応型・・・発芽直後の種子段階で低温感応により花芽分化をする。一年生冬植物や多年生のイネ科植物に多く見られる。
          ex. ダイコン、カブ、ハクサイ、エンドウ、ソラマメ
緑植物感応型・・・植物体がある程度大きくなってから低温感応により花芽分化をする。
           ex. キャベツ、ブロッコリー、セルリー、ニンジン、ネギ、タマネギ、ゴボウ
・植物は低温と日長により花芽形成が促進されるが、日長に影響を受けるものは短日植物、長日植物、中性植物に分けられる。短日・長日は暗期の長さによって決定され、暗期が長くなると花芽を形成する植物が短日植物、暗期が短くなると花芽を形成する植物が長日植物である。
短日植物・・・短い日長条件、つまり秋の短日により花芽分化する。ex. イチゴ、シソ
長日植物・・・長い日長条件、つまり春の長日により花芽分化する。ex. ホウレンソウ、シュンギク、レタス
中性植物・・・日長条件とは無関係に花芽形成する。ex. ナストマト、トウガラシ(ピーマン)、キュウリ
・植物の花芽分化は日長条件だけでなく温度条件によっても影響を受け、また1つの作物種の中でも日長に対する反応の程度が異なる多くの品種がある。そのため、特に品種分化の著しい蔬菜類を短日・長日植物に類型化することは難しい
・周年供給を可能にするために生まれた栽培技術体系のことを作型といい、葉根菜類では主に播種期を変え、その季節に適する品種を選択することで収穫期を変化させている(春播き、夏播き、秋播き、冬播き)。一方、果菜類では葉根菜類に比べて収穫までの日数が一般に長いため、品種選択よりも耕種法や環境調節によって作型が分化している露地栽培、早熟栽培、促成栽培、半促成栽培、抑制栽培)。
・植物はその受粉形式により自殖性植物と他殖性植物に大分される。
自殖性植物・・・自家受粉によって繁殖する植物を自殖性植物といい、その遺伝子型はホモになる。自殖性植物は雄しべと雌しべの同在する両性花雌雄同熟性自家不和合性を示さないなどの自殖を促す機構をもつ。他にも特異的なものとして閉花受粉がある。注意すべき点として、自殖性植物は完全に自殖を行うのではなく、雄性不稔や開葯遅延が起こった場合には他殖も行うことが挙げられる。ex. イネ、コムギ、ダイズ、トマト、ナス、タバコ
他殖性植物・・・他家受粉によって繁殖する植物を他殖性植物といい、その遺伝子型はヘテロになる。他殖性を促す機構は雌花と雄花の分かれた単性花雌雄異花)、雌雄異熟性自家不和合性を示す風媒・虫媒などがある。ex. ホウレンソウ、トウモロコシ、ニンジン、キャベツ

野菜の生育特性

・サツマイモは酸素不足窒素過多の土壌条件でつるぼけ現象を起こしやすくなる。また肥料三要素のうち、イモの肥大にとって重要な栄養素はカリである
・イチゴの花芽分化は低温・短日で促進される。実際の栽培では低温処理を行うことで花芽分化を促進させている。
・ホウレンソウやレタスは酸性に弱い部類の作物であるため、必ず石灰を施用してから播種する必要がある。
・タマネギ、キャベツ、ニンジン、ゴボウはある大きさに達してから一定期間の低温に遭遇すると花芽形成を行う幼植物感応型植物である。品種や播種を誤ると低温に感応して、花芽を形成し、抽だいすることがある
・ダイコン、ハクサイは植物体の大小に関わらず、一定期間の低温に遭遇すると花芽分化を行う、種子感応型植物である。
・一般に温帯原産の植物は熱帯・亜熱帯原産の植物に比べ、低い温度での発芽が可能である。発芽最低温度はゴボウでは20℃、ホウレンソウ、レタスでは0〜4℃である。

野菜の特性

・トマトの第1花房が着生する節位は8〜9節である。
・タマネギの結球は15〜20℃で行われるが、品種によって結球の限界日長は異なり大体11.5時間から16.7時間で、早生品種ほど結球に必要な限界日長は短い
・ダイコンのス入り現象は秋作では肥大後に発生するが、春作ではあまり大きくならないうちから発生する。
・エダマメとインゲンは子葉が地上発芽型であり、エンドウとアズキは地下発芽型である。
・ナスの正常花は長花柱花である。

野菜の生長に及ぼす環境要因

・野菜の種子には発芽の際に光を必要とする好光性種子(光発芽種子)、暗黒を必要とする好暗性種子(暗発芽種子)がある。また光の有無に影響を受けないもの(ex. エンドウ)もある。
好光性種子・・・光によって発芽が促進される種子を好光性種子という。一般に種子の成熟が進むにつれ光要求性は減少し、また変温条件や化学処理(硝酸塩、ジベレリンなど)により暗所でも発芽ができる。ex. レタス、タバコ、ゴボウ
好暗性種子・・・暗所では容易に発芽するが光で発芽が抑制される種子を好暗性種子という。ex. タマネギナス、ダイコン、キュウリ、スイカ
・タマネギの鱗葉は貯蔵葉とも呼ばれ、結球部分の大部分を占める葉をさす。ハクサイにおける結球は低温が好条件であるが、タマネギでは適温が15℃以上であり10℃以下では球形成に著しく多くの日数を要する。
・ダイコンは木部肥大型植物、ニンジンは篩部肥大型植物である。




  


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